幼少期のお気に入りはイソップ童話だった。
ライオンとネズミが話す世界。
その後、どんなものに出会っても、動物が喋る世界へ焦がれる思いは変わらなかった。
学生時代は、幻想文学ゼミで来る日も来る日もファンタジー小説を読み続けた。
絵を描く習慣はなかった。
当時、鮮烈に登場したばかりのパソコンに夢中だった。
“電子データは欠損することなく半永久的に残る”ということにロマンチックなものを感じた。
しかし、保存するハードディスクが壊れてしまえば、それは一瞬で消える世界。
いくらでも書き換えることはできるが、それゆえに思い入れのないものが溢れやすい世界でもある。
そして気づけば、わたしがパソコンで扱うものは「紙」や「布」などのアナログな素材ばかりだった。
アナログが好きなら最初からアナログで表現してみてはどうだろうと思った。
書き直しできないものに、小さい頃から好きだった幻想の世界を再構築する。
思い出を形にしていけばいいのなら、つくりたいものは無数にある。
この世界に溢れるモチーフを形にしていくのだ。